最近は賃貸派の人が増えてきたとはいえ、やはりマイホームを購入する人は多いようです。特に結婚して子どもが生まれたりすると賃貸ではなく「自分の城」を持ちたいものでしょう。

そこで皆さん検討するのが住宅ローンだと思います。今はフルローンで住宅が購入出来てしまう時代ですが、借りるのは簡単でもいざ返済が始まると家計が苦しくなってしまう・・・という事例もあるようです。

安易に住宅ローンを組むのではなく、年収やライフプランに照らし合わせて、きちんとシミュレーションしてから借りたいですよね。

住宅ローンを組む際の年収倍率は7倍?8倍?9倍?

いざ住宅ローンを借りようとなった場合、いくらまでなら借りられるのか(借入可能額)と悩むと思います。銀行の窓口に行けば簡単に借入可能額を教えてもらえますが、それを安易に鵜呑みにしてはいけません。

ローンを組む際、年収倍率というものがあり、その倍率があまり高すぎる場合は返済が苦しくなるケースもあります。そういったことから計算してシミュレーションしていくのは非常に大事なことです。そのシミュレーションと住宅ローンについての簡単な知識を紹介していきます。

そもそも年収倍率とは

年収倍率とは住宅の購入価格と購入した人の年収の比率のこと。年収の何倍で住宅を購入したかという数値のことです。 年収が高ければ、それに比例して借入可能額も上がっていきます。

年収倍率の計算方法

年収倍率の計算方法は以下のようになります。

年収倍率=住宅ローン総額÷年収

合わせて覚えておきたい返済比率とは?

返済比率とは返済負担率とも言われ、「年収に占める年間返済額の割合」のことを指します。住宅ローンの審査で銀行などの金融機関がチェックするのがこの返済負担率です。それぞれある程度の基準が決まっており、それらの基準をオーバーすると借主の返済する負担が重くなり、返済が滞る可能性が高まります。

銀行も貸し倒れのリスクは取りたくありません。そのために融資が通らなかったり、借入額が減額されることがあります。この基準は金融機関やローンの種類によって変わってきますが、だいたい30%~35%となっているようです。

年収倍率はおおよそ5~7倍がいいといわれている

昔から一般的にサラリーマンの住宅ローンにおける年収倍率は、5倍以内が良いとされてきました。しかしそれはバブルの頃の話で最近は年収倍率が増加傾向にあります。

それはバブルの頃に比べて低金利の時代が続いており、昔より年収倍率があがっても無理なく返している傾向があるようです。そういうことから年収倍率は5~7倍でも良いとされています。

住宅ローンには返済比率が絡んでくる

先にも書きましたが、住宅ローンを借りる際は借りたい銀行から審査を受けます。この審査で目安となってくるのが返済比率です。あくまで一つの目安ですが、この判断基準によって借入可能かどうか決まってきます。

年収倍率約5-7倍まで、返済比率20‐25%以内であると生活に余裕が持てる

住宅ローンがきつい、家計を圧迫しているという話は良く聞きます。せっかく素敵なマイホームを持ったのに、生活が厳しくなっては本末転倒ですよね。家計にゆとりを持たせるためには年収倍率は5ー7倍まで返済比率は20ー25%が理想です。

「借入可能額」よりも「返せる金額」を基準に

借入可能額は年収によって違ってきます。具体的な数字は後述しますが、気をつけたいのは金融機関が貸してくれるからと言って、借入可能額ばかりに注目しないことです。

借入可能額限度いっぱいまで借りて、予算より高めの家を購入し支払いが出来なくなるというパターンは避けたいもの。住宅ローンという負債を抱えて生活していくのですから、毎月の返済金額がいくらまでなら家計が圧迫しないかなど計算して「返せる金額」を基準にすることです。

どれくらいの年収でいくらの住宅を購入できるのか?

ではそれぞれの年収での借入可能額のシミュレーションをしてみましょう。それぞれ35年の返済期間、金利1.5%で借りた場合の借入可能額です。返済比率は35%、20~25%でシミュレーションしてあります。

【300万台でのシミュレーション】

返済比率35%       2858万5429円
返済比率20%~25%    1633万4531円~2041万8164円

【400万台でのシミュレーション】

返済比率35%       3811万3906円
返済比率20%~25%      2177万9374円~2722万4218円

【500万台でのシミュレーション】

返済比率35%       4764万2382円
返済比率20%~25%     2722万4218円~3403万0273円

 

【600万台でのシミュレーション】

返済比率35%       5717万0859円
返済比率20%~25%     3266万9062円~4083万6328円

それぞれ返済比率が20%と35%では、実に1000万以上の開きがあるのがお分かりいただけたと思います。この差は毎月の返済額に重くのしかかってくるでしょう。

自分の今後の生活スタイルを見つめ直す

更に住宅ローンを返済していく中で重要なのは、自分や家族の今後の生活スタイルを見つめ直すことでしょう。無理のない返済額を設定して今後のライフプランにおけるリスクなどを考慮し、子どもの教育費や、家族の娯楽費を削ることのないようにしたいものです。住宅ローンの返済が家庭の財政を圧迫しないようにしたいですね。

いつまでもその年収が続くわけではない  

今は年収も右肩上がりの時代ではなくなってきました。突然のリストラや給与の減額やボーナスカットは珍しくありません。また大黒柱の突然の病気による休職などの、リスクは十分考えられます。そういった年収が下がることのリスクも踏まえたうえで、住宅ローンを設定しましょう。

30年後から35年後を考える

また住宅ローンとともに考えるライフプランのなかで、30年後から35年後を考えるのも大事なことです。定年後にまだ住宅ローンが残らないように退職金で一括払いする人もいるようですが、 それで老後資金がなくなってしまっては元も子もありません。

そのために無理なく返済できる金額に設定し、今の生活スタイルを見直して、早いうちから少しでも老後資金用の資産を増やしていくことをおすすめします。

みんなの質問疑問点

ここまでざっくり住宅ローンについて説明しましたが、実際に借りる場合の細かい疑問点はあると思います。皆さんの疑問点にお答えします。

Q.住宅ローンの年収の倍率は手取りで計算するの?

手取りではなく額面の税込み年収で計算します。

Q.年収が低くても住宅ローンを組める銀行はあるの?

一部の金融機関では年収を審査基準に設けているところもあります。あまりに低かったり非正規雇用の場合は審査で落とされることがあるようですね。

そんな中でもネット銀行やフラット35など審査基準が比較的ゆるいところもあり、年収が低くても非正規雇用でも住宅ローンを組むのは十分可能です。

Q.住宅ローンは年収によって金利が変わってくると聞いたのですが本当ですか?

金融機関にもよりますが、金利は借りる人それぞれの条件によって変わってきます。

例えば年収が低すぎる人よりも年収が高い人のほうが返済能力が高いとみなされ、信用が高くなり金利は低くなる傾向にありま。また勤務先が一部上場企業や公務員ですと、やはり金利は優遇されるようです。

Q.住宅ローンの計算を昨年の源泉徴収票の支払総額に基づいて計算したのですが合ってますか?

合っています。源泉徴収票上の部分の「支払金額」が、その人の年収です。

手取り金額の算出方法は

「支払金額」-「源泉徴収税額」-「社会保険料等の金額」=手取り金額 です。

Q.住宅ローンを組む際に銀行から借入できるかどうか判断する要素は年収だけですか?

前の文章でも述べましたが、借入できるか判断される審査基準は多くの要素があります。年収や勤め先が同じでも落とされる人と通る人がいます。

例えば他の借入(自動車ローンなど)がある場合や勤続年数が少ないこと、またローンの返済の遅延なども審査に影響します。最近たまに見かけるパターンで携帯電話の利用料金をカードで引き落としていて遅延があるケースです。本人はそれほど重要視はしていないのですが、信用履歴に瑕疵がついていて、審査が通らなかったという事例です。

審査が通るということは自分の今までのお金の使い方が、信用できると判断されることです。自分の履歴や負債状況などを確認することが重要です。

最後に

人生の三大出費と言われている住宅費、保険費、教育費。そのなかでも数千万単位の負債を背負うことになる住宅ローンは一番重要なものといっても過言ではありません。もし払えなくなった場合は家を失ったうえに多くの負債を抱え、一生を棒に振りかねません。そのためには住宅ローンを借りる際に様々な条件、視点から考えることが大事です。

また借りる金額だけではなく、ローンを払っていく上で自分や家族のライフプランを考えることも重要です。子どもを持つならば何人にするか、将来転職をするのか、子どもにどれくらいの教育費をかけたいか、じっくり考えるべきです。

老後を迎えたときにその家で暮らしていきたいのか、それとも終末期は老人ホームに入るのか、そういったこともいずれ考えなくてはなりません。そういったことは家庭によって様々ですから、家を持つときにこれからどんな生活をしていきたいか、じっくり皆で話し合うといいですね。

夢のマイホームで楽しい生活をおくるために、素敵なこれからのライフプランをじっくり考えましょう。

監修:高橋 政実(ファイナンシャルプランナー)